こんにちは、ただほん です。今日は阿津川辰海さんの「入れ子細工の夜」の書評を書いていきます。
著者について
阿津川辰海
1994年、東京都生まれ。2017年「名探偵は嘘をつかない」でデビュー。以降「星詠師の記憶」「紅蓮館の殺人」「透明人間は密室に潜む」「蒼海館の殺人」などミステリー作品がある。
僕が初めて知ったのは、「透明人間は密室に潜む」です。買ったのは良いのですが、いつでも読めると思っていたら、なかなか読むことなく今に至ります。
それなのに、新しい小説「入れ子細工の夜」を買ってきてしまいました。
まず、書き出しの「おれは…」のハードボイルドのところにやられてしまったのです。「おもしろい!」と思ってしまいました。
そんな感じで気づいたら、最後まで読んでしまいました。
さて内容にはいっていきましょう!「入れ子細工の夜」は4つの短編を集めた小説となっています。
入れ子細工の夜
1,危険な賭け〜私立探偵・若槻晴海〜
主人公は「おれ」こと若槻晴海。「おれは何百回と繰り返したような仕草で…」とハードボイルドに決めた男である。
「おれ」はある事件について調べている。牧村真一、三十五歳、フリーの雑誌記者が何者かに殺害された。
彼が持っていた夕神弓弦(ゆうがみゆずる)の『まだらな雪』という小説を家族の依頼によって探している。
その本は彼の持っていたカバンに入っていたはずだが、どうやら喫茶店でカバンの取り違いがあったようだ。
「おれ」はその本を探して古本屋を周り、探偵として探っていくが…。その本『まだらな雪』はどこにあるのか?なぜ、その本を探偵は探しているのか?
2,二〇二一年度入試という題の推理小説
K大学の2021年度の入試「推理小説の犯人当て」というのが行われる。
入試の問題が「推理小説」になっていて、その犯人を当て動機も当てるという問題である。
A君は中高一貫校に通う受験生である。受験勉強と言うことで「推理小説」を買い漁り、どんどんハマっていく。
また、S塾の現代文カリスマ講師・山崎努は、S塾の方から「なんとかしろ」とのプレッシャーを受ける。
そして、受験日当日「煙の殺人」というミステリー小説問題が出される。犯人を当てなければ合格はない。A君、カリスマ講師山崎、それぞれが受験後、ネットで回答を発表するが、結果は…。
3,入れ子細工の夜
「ここは、長い長い夜の途中。」小説家は、ある一人の男と推理合戦のようなことを行っていく。
その男は編集者の新人編集員になりすまして近づいてきた。二人のやり取りは、「誰が小説家の妻を殺したのか」というやり取りであった。
2転3転し、どちらが殺したのかわからなくなる。入れ子細工のようにどんどん場面が繰り返されていく。
4,六人の激昂するマスクマン
6人のマスクマンたちが、「全日本学生プロレス連合」の第50回総会に集まってくる。
W大学代表 ズルムケ・マランプ、A大学代表 バイオレット・ボア、H大学代表 ウルフ山岡、K大学代表 ホークアイ鷹城の4人のマスクマンたちと、
「おれ」T大学代表 ファントム・ザ・グレート。それとまだ来ていない、S大学代表 シェンロンマスク四十九世とリングアナウンサー 坂田大介、計7名が集まることになっていたが、シェンロンマスク四十九世は来なかった。彼は河川敷で殺害されてしまっていた。誰が彼を殺したのか?マスクマンたちが激昂し推理をしていく。
感想
4つのそれぞれ違った趣向のミステリーで、少し癖のある小説でした。好きか嫌いかで言ったら、好きですね。
1つ目の「危険な賭け」は、探偵が危険な賭けに挑んで行き、段々と緊張感が増していく感じが伝わってきました。
著者がいろいろな小説が好きなのがよく分かりましたが、中に出てくる小説自体は余り知りませんでした。
ハードボイルド感が良く伝わっていて、これぞハードボイルドだと思いました。結果、そういうことかと思わされました。
2つ目の「二〇二一年度入試という題の推理小説」は、これもまた仕掛けのある小説です。
問題の中に「推理小説」があり二度楽しめる内容になっています。結局は誰が一番悪だったのか?なんて感じでしたね。
3つ目は、本のタイトルでもある「入れ子細工の夜」ですが、ドラマ、もしくは舞台を見ているような感じでした。
遊び心いっぱいの内容でした。入れ小細工と言えば、「マトリョーシカ」が有名ですが、そのままでしたね。好きか嫌いかは分かれるところですね。
4つ目「六人の激昂するマスクマン」は学生プロレスを舞台にした作品です。
六人それぞれのキャラが面白いです。誰が殺したかってところですが、それよりも誰が嘘をついているのか、ですかね。
話し合うところ面白かったです。プロレスラー、体育会系はやっぱりあんな感じにうるさいんですかね。個人的には好きな小説でした。
もし興味があったら是非読んでみてください!
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